失語症について

 失語症は、朝日新聞のリハビリシリーズでも取り上げていました。そこにも触れられているのですが、見過ごされている失語症、隠れている失語症が多いなあという印象をうけます。仮想ですが、多くあるケースを取り上げます。
  • 若い女性のAさん…高次脳機能障害なので、精神障害者手帳を取って、就労したいと来られました。しかしいわゆる高次脳機能障害はほとんどなく、人の名前や電話が判りにくいという失語症がありました。そこで身体障害者手帳を取られ、障害者枠での就職が決まりました。
  • 若い男性のBさん…話はまあまあ通じるので、失語症とは思っていませんでした。でも、どうも右手の動きが悪い、家族にも時々、「それなに」、「どういう意味」と聞き返し、なんか理解が悪いというお話でした。評価の結果高次脳機能障害と失語症が合併していることがわかりました。
  • 50代の女性のCさん…家で家族が介護されています。デイに行かれていますが朝から大声で混乱、何を言っているのか判らない、トイレも失敗するという方でした。この方も、高次脳機能障害と失語症の合併ですが、失語症も重度であるため、行動も言葉も混乱し、精神障害、認知症と思われ、抗精神病薬が投与されていました。
 一般的には、急性期病院からリハビリテーションに行く間に、医師から説明があったり、言語聴覚士(ST)からリハビリを受ける間に、失語症と判るという場合が多いと思います。
 しかし、最初の医師が失語症に気づかないと、そのままSTの評価や言語のリハビリを素通りしてしまうこともあるようです。こんなときに、他の医療従事者から、チームミーティングなどで問題提起がなされ、STの関与が始まることも多いのでしょうが、今のリハビリは、大急ぎなので、うまく行かないこともあるのではないでしょうか。

 では、どんな状態があると失語症が疑われるのでしょうか。多くお方は、右麻痺と合併していることが多いので、右手が少し不自由になった方、急性期にしばらくうまく話せなかった方、話し方が病前と違っている方、あれあれ、と言葉がなかなか出ない方、何か言ったときに、「え、それ何、どういう意味?」とたずねたり、よく聞き間違う方、いっぱいしゃべるけど、どうもコミュニケーションが採り難い方、こういう方々は失語症の可能性があります。
 失語症以外に、うまく口や舌が動かない、高次脳機能障害のためなど色々な原因が考えられます。失語症があると、うまく話が伝わらないために、暴言が出てしまう人、だんだんしゃべらなくなり、憂鬱になる人、沈黙は金を決め込んで、「ああ、おお、あれあれ、すまん」で過ごし、自他ともに失語でないと放置されている人などがいます。
 失語症の専門家であるSTによる評価が必要になります。