トイレの話

 少々尾籠なお話で恐縮です。でもとても大切な話です。
 私は、当院に来られた患者全員に、トイレは大丈夫ですかと聞くことにしています。
 まだちゃんと統計は取っていませんが、半数くらいの人が、色々と問題を話されます。
 中には、ご主人に今まで言えなかったので、まずご主人に「ごめんな」と謝ってからお話になるご夫人もいます。
 まあ、大概の脳損傷の人は、入院中は膀胱カニューレを入れられ、大便にはおむつをされていたので、良くなる過程では多くの方が、経験されていることです。

 一番多いのは、尿の回数が多くなる「頻尿」です。
 飲み物やストレスなど、尿の回数には種々な要素が関係するので、一概には言えませんが、夜中3回以上行くと頻尿では?ということになります。

 トリやサルなど、気にせずにどんどんそこいらにしてしまう動物がいる一方、ライオンなどの猛獣や人間は排尿をある程度制御するようになったそうです。ライオンがそこいらで尿が出てしまうと、「あ、ライオンがいる」と、シカなどが逃げてしまうので、ライオンは息をひそめ、おしっこを我慢して、獲物に近づくのです。
 人間も、ある程度コントロールできないと、仕事になりませんし、そこら中臭くて大変ですね。
 頻尿には、膀胱の過敏を抑える薬があります。

 尿が漏れるという現象は、最近よく女性の問題として取り上げられるようになりました。脳損傷の後、特に女性では、尿漏れがひどくなる人も多いようです。骨盤底筋体操などが有効ですが、しっかり歩くということでも良くなる人が多いようです。気になるようなら、パットやリハビリパンツをはいてしまう方が、日常生活が気楽になるようです。

 これ以外に、尿が出にくい、溜まっているとか出ているという感覚がないなど、色々な症状がありますが、神経泌尿器科医を受診する必要があるかもしれません。
 最近、尿漏れコンサルタントという人がいるようです。

 排便も大きな問題です。うまくコントロールできない人は、あまり下剤を飲むと下痢をして大変になります。かといってひどい便秘になりがちな人もあり、排便の度に摘便をするというのも気の毒です。
 下剤、浣腸などを利用するには、訪問看護師さんのお世話になる人も多いです。

 尿も大便も感覚があまりない人は、時間をたよりにトイレに行かれています
 大切なことは、トイレの問題は脳損傷の後に良くある症状なので、あまり遠慮しないで、まず医師や看護師に相談しましょう。